中央・南アルプス

「木曾谷と伊那谷の間を仕切って、蜿々と連なった山脈」(『日本百名山』)。深田が屏風だと形容した中央アルプスは、急峻な登山道と大きな瀑布が特徴だ。その東側に、くさびを打ち込んだごとくの南アルプスが連なる。ひとつひとつの山が大きい。~鳥瞰図で楽しむ日本百名山~

中央アルプスには私は一度しか入山していない。しかも駒ヶ岳ロープウェイで千畳敷カールまで一気に高度を稼ぐ“ナンチャッテ”登山で懐深い筈の木曽山脈に潜り込んだので、その後全山縦走を果たしたとは言え印象が薄い。

一方、南アルプスには都合5回入山し、殆どが重い荷物を背負っての縦走登山だったので思い出深い。特に、白峰三山や鳳凰三山を除いて実質独立峰が連嶺を成しているようなもの。別名、赤石山脈とされる南部一帯の山々は一つひとつのサイズが大きく、山を越える毎に数百mの登降が連続する…軽快さとは程遠い体力勝負の縦走であった。そんな汗だくの苦労を経て登り切った頂稜部には、人影もまばらで絶好の富士見展望台を独り占めする贅沢極まりない至福の時があった。

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