【82】甲武信岳(甲武信ヶ岳)

【2014年11月29日】

その年の登山シーズン最後、晩秋の行先に選んだのは甲武信岳であった。頂上に祠もなければ三角点もない、昔から名山と讃えられた山ではないと深田久弥が言う通り、私にとっても大した印象の無かった山である。ただ、甲州・武州・信州の三国を山名とし、千曲川・荒川・笛吹川の源流がこの山にあるという奥深さには興味があった。
山梨市駅から少ないバス便を頼りに西沢渓谷の登山口(1,100m)に着いたのは既に11時と遅かったので、すぐにヌク沢を遡る展望の利かない近丸新道に入る。途中、みぞれで滑る岩に足をとられ側頭部を打つトラブルもあったが、何とか1時間で戸渡尾根(1,869m)まで登り切る。頭には大きなたん瘤ができていて、滅げそうな気分のなかコブなら脳は大丈夫な筈と自分を励ましながら先を急ぐ。
標高2,000mを超えると登山道周辺に積雪が目立ち始め、木賊山(2,469m)から先は約5cm程度の雪道を歩かねばならなかった。14時過ぎ何とか甲武信岳登頂を果たすも、ガスに覆われ周りの景色は見えなかった。諦めて木賊山まで戻ってきた頃、雲が上方に上がってその下からおむすび型をした甲武信の山容や広瀬湖、更に遠く富士山まで見えてきた。
暗かった気分も晴れてきて、帰路は尾根道の徳ちゃん新道を辿る。木々が葉っぱを落として明るい樹林帯のその道はフカフカで歩きやすく楽しいものだった。
夕暮れ迫る登山口に下りて最終バスで塩山へ向かい、その晩は大学ゼミ仲間の廣瀬君の実家に宿泊。息子さんが運転する車で一緒に温泉に入り、お母さまも含めた廣瀬家の皆さんと中華料理店に行って賑やかな楽しい一夜を過ごさせて頂いた。

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