【5】至仏山

【1982年10月2日】

大学1年の秋、逍遥会有志4名の混パ(高根㊚・羽田㊛・田村㊛)で尾瀬に向かった。「夏が来~れば思い出す…」の歌で水芭蕉に憧れを抱いていた自分だったが、紅葉も悪くないよと先輩方に誘われて登山口の鳩待峠(1,591m)に入った。
オヤマ沢田代から小至仏山(2,162m)へと続く木道の両側は草紅葉に覆われ、赤・黄に色づいた樹林の上に燧ヶ岳の黒い三角形のシルエットが浮かんでいた。程なく至仏山頂(2,228m)に到着、この日は薄霞といった天候ながら眼下には燧ヶ岳の裾まで続く尾瀬ヶ原の拡がりが俯瞰できた。蛇紋岩で生成されたこの山には特有の高山植物があると聞いていたが、既に季節は秋なのでホソバウスユキソウやオゼソウといった花は見れなかった。高天ヶ原から山ノ鼻へと下る急斜面の岩は思いのほか滑り易く、女性陣の尻もちを笑いながら歩いていた男二人も含め皆なお尻に土をつけて下った。初日は下田代十字路まで6時間41分の実働にて⛺テン幕した。
2日目は尾瀬ヶ原湿原の中央を貫く気持ちのいい木道歩き。時折振り返る至仏山が次第に霞んで、代わりに前方に大きく燧ヶ岳がハッキリ見えてくるスローな景色の変化を愉しみつつ、燧山麓の沼尻から尾瀬沼を半周して尾瀬沼山荘にて昼食。その日は絵画のような紅葉を愛でるハイキング気分の軽い行程を辿り、大清水まで実働4時間10分で到着し帰路についた。

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