【63】平ヶ岳

【2009年8月27日】

深田久弥をして「平ヶ岳は日本百名山を志した最初から私の念頭にあった」と言わしめたその山は、登山口までのアプローチの長さと山中に宿泊可能な小屋等もないことから幻の秘峰とされてきた。
私は登山口の鷹ノ巣まで車を利用することで前者のアクセス問題を回避したが、そこから片道10.5km往復10時間超を要する後者の長い行程をクリアするには相当な気合いが必要だった。因みに近年、百名山フリークの中高年登山者の増加に対応して事故防止のためか、頂上直下にキャンプ地が設けられたようだが私が訪れた頃の常識として…この山はそっとしておきたい日帰りピストンすべき対象の山であった。
夜明けの奥只見ダム沿いの国道352号線を鷹ノ巣(標高840m)まで走行して登山を開始したのは7時過ぎ、少し遅いスタートに焦りを感じつつ下台倉山(1,604m)までの急登痩せ尾根を犬の歩行を確かめつつ2時間掛かりで登りきる。
そこから先は歩きやすい緩傾斜の道となるが、如何せん距離が長いため頂上台地の一角をなす池ノ岳(2,080m)に到着したのは13時と捗らず焦りが募る。時間的余裕はあまりないものの、滅多に来れない山なので平ヶ岳のシンボル玉子石の奇岩まで往復してピークを踏んだのは14時過ぎ。
木道脇を5mばかり外れた所にポツンと道標が置かれただけの目立たない三角点には興醒めだったが、周りの景色は高峰とは思えない異観。牧場のように広い大湿原の中に無数の池塘が配されたまさに山上の楽園、その草地のクッションを見つけて寝転がる愛犬🐕マロンの気持ち良さそうな姿に癒される。
周囲の山から眺めて2,000mの山上飛行場のような平地に見える特徴的な山容の平ヶ岳、実際に登ってみて想像以上の個性をもって私の心を躍らせてくれました。帰路から逆算してギリギリの15時まで山頂プロムナードを満喫して下山を開始、夕闇迫る18時半登山口まで無事帰還した。

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