【29】剣岳(剱岳)

【1985年9月26日】

就活が一段落した大学4年の秋、来年社会人になって広島へ帰ると暫く山から遠ざかることになるかも知れないという思いから、逍遥会同期の伊庭君・久野さんと共に北アルプスで登っておかねばならない心残り剱・立山連峰の縦走に出掛けた。
9月23日黒部ダムから内蔵助谷を見下ろすスリル満点の水平歩道を歩いて真砂沢まで入って東女WGの知合いから借用したエスパーステントで⛺テン幕。翌日、日本三大雪渓の剱沢を登り詰めて剱沢キャンプ場に到着するも悪天のため、25日両名は室堂へ下山し自分一人残って停滞。
天候が回復を待って9月26日、独り剱岳へのアタックを敢行。朝の1本目で一服剱(2,618m)へ到達、そこから先はいよいよ蟹の横這い・縦這いの難所だ。流石に岩の殿堂と言われる剱岳だけあって、梯子・鎖の連続に神経が研ぎ澄まされ、前剱(2,813m)を越え平蔵の頭、平蔵のコルと難所続きに何だか心地良い緊張感に包まれ疲れを全く感じないまま剱岳(2,998m)に登頂した。
ピークには誰の姿もなくただ私一人のみ、深まる秋色を映じた立山連峰の山肌と岩だらけの足元剱のコントラストからなる絶景を堪能、静かな感動を噛みしめること暫くして下山の途についた。
剱御前(2,776m)を経て別山乗越まで下山して振り返ると、それまでレンズに入りきれなかった剱の山容が綺麗にピタッと収まり、あの頂上に登ったんだという感動が増幅した。

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