上信越・北関東

「わが国の名山には偉い坊さんによって開かれたものが多いが、たいていは伝説めいている」(『日本百名山』)。山の頂には祠があり、麓には寺社が鎮座している。人々が行き来した道が伸び、峠がある。いくさがあり、城が築かれた。一座一座に歴史が刻まれている。~鳥瞰図で楽しむ日本百名山~

この地方の山は悉く単独峰で、しかも各々バラエティに富んだ面白味がある。しかしながら、私がそうした個性を知ったのは山を始めて随分経ってからのことだった。若い時分は、とにかく縦走できる高峰を優先して登っていたため、高度的にもそれ程目立たない上信越・北関東エリアの山々は自ずと後回し。百名山踏破という目的が無かったら、恐らくこれらの山の良さを知らないまま勿体ない登山歴を重ねていたかも知れない。

火山の那須岳・白根山・浅間山・妙高山などは一般に知られる目立つ存在だが、山懐深く分け入らなければ味わえない平ヶ岳・苗場山の真っ平らな山容、高層湿原と山との絵になる組み合わせも目を愉しませてくれる。尾瀬ヶ原と燧岳・至仏山、日光戦場ヶ原と男体山・奥白根山以外にも、多くの山の頂稜部で絶妙なコラボ風景が見られた。また、山岳信仰との繋がりの深い山々など…引き出し豊富な愉しみ方ができるエリアだ。

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