【42】光岳

【1991年8月23~24日】

この日も晴天の朝を迎え、聖沢・赤石沢を隔てた東向かいの稜線上に聳える笊ヶ岳(日本二百名山)の双耳峰から昇る御来光、その右奥に昨日よりはっきりした姿で富士山を眺めることができた。
本日は最南端の光岳までのロングコース、気合いを入れて登山を開始。
2時間余りで上河内岳(2,803m)のピークに到着、聖岳、兎岳、赤石岳まで今日はクッキリ確認できて気分は上々。ところがそこから1時間半進んで、茶臼岳(2,604m)に着いた頃からまたも雲が湧き上がり、更に2時間で易老岳(2,354m)への到着時には雨も降り始める。
この辺りから樹林帯に入り、周りに猛毒のトリカブトが群生する怪しい登山道となった。南アルプスの南の端に近づき、気温もそれなりに高いのでカッパで蒸れるのは嫌なので傘をさしながら我慢づよく歩くこと2時間で、夕暮れ時にアースハンモックと呼ばれる周氷河地形の亀甲模様土壌が特徴的なセンジヶ原湿原に到着。その日は近くの光小屋に宿泊した。
最南最深部にひっそりと建つ光小屋には他に4名の方がおられたが、話を聞いていると皆な顔馴染みのようだった。どうでも東京のIT系最先端会社で出稼ぎバイトしては、この小屋に長期間入り浸るという隠遁者のような生活の様子で、トリカブトの残像も手伝って…私には学生運動のインテリ残党のような怪しい雰囲気が感じられた。
翌日は朝から雨降り、光岳頂上(2,591m)とこの山のシンボル光岩の巨大な岩塔を見に行った後、易老岳まで稜線を戻りそこから一気に高度を下げ易老渡(850m)まで蛭に悩まされながら降りる。光岳登山口の南信濃村遠山郷は高曇り、久し振りに肌に感じる夏の暑さだった。

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