【10】羅臼岳

【1983年8月24日】

8月21日に自転車で知床半島へ入り、海辺の露天風呂セセキ温泉へ入って国設羅臼温泉キャンプ場にて天幕。ここは硫黄香高く熱い源泉かけ流しの無料露天風呂、熊ノ湯が近接していてあまり気持ちいいので連泊して旅の疲れを湯治で癒す。すると、やはり連泊していた30歳前の男二人のキャンパーに声掛けられてキャンプファイヤーを囲んで、彼らが羅臼川で釣り上げた岩魚の串焼きをご馳走になる。彼らは会社を辞めて北海道へ車でやって来て、全く予定なしの気ままな旅を実践中とのこと…この時代は70年代の米ヒッピー文化に影響を受けた人も居た。後々“自分探し”という言葉も流行ることになるが、その先駆けだったのかも知れない。改めて旅の空の下には色んな人種が居るものだと感心する。
8月23日、2日振りに自転車を稼働して標高740m超の知床峠を超えて宇登呂入りし民宿ペレケに前泊。知床五湖やオシンコシン湯の滝を散策後、羅臼岳登山に挑む。岩尾別温泉登山口を出発して針広混交樹林の急坂をオホーツク展望台(標高500m)まで登ると、その名の通りの海展望と羅臼岳が見えてきた。ところがその先で強い獣臭が漂ってきた…クマ牧場で嗅いだあの臭いだ!なにせ知床は羆の密生地で、今日泊まる予定の宇登呂国設キャンプ場付近でも、過去には学生が数人獣害に遭遇した場所である。
単独行の私は怖くなり、他の登山者が来るのを暫く待って行動再開したため大幅にペースダウン。そこから知床連山縦走ルートの羅臼平まで2時間かけて登り、昼前に羅臼岳(1,660m)にやっと登頂した。天気も良く360度の大展望が得られそこそこ満足したが、ここに至るとやはり硫黄山から更にその先の道なき道を行く知床岬までの最果て縦走をやってみたいという欲求が高まる。羆の王国に独りで入るのはあまりに無茶と諦めて下山した。
p.s.その後、知床の世界遺産登録を経て2006年には、知床大橋まで通じていた林道がカムイワッカ湯の滝止りでその先は徒歩を含めて全面通行止め。知床連山完全縦走の夢は不可能となる。

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